研究内容

グラフェン,遷移金属ダイカルコゲナイド量子構造

ファンデルワールスヘテロ接合デバイス

グラファイトの単原子層膜であるグラフェンはその高い移動度や二次元性などから次世代のエレクトロニクスデバイスへの応用が期待されいますが、通常使用されるSiO2/Si基板では電荷不純物や表面の粗さの為、グラフェン本来の性能を引き出すことができません。ですがグラフェンと同じく単原子層まで機会剥離によって得ることができるh-BNと呼ばれる絶縁性の物質によって挟み込むことによって室温においてシリコンの100倍以上、低温では1000倍以上の移動度に達することが確認されています。またグラフェンをはじめとする半導体である遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)や超伝導体であるNbSe2などの二次元物質は面外方向にダングリングボンドを持たないため、それら同士をvan der Waals力を用いて自由に重ねあうことができます。このようにしてファンデルワールス力を用いて作製した接合デバイスをファンデルワールスヘテロ接合と呼び、従来のバルク物質には存在しない新たな機能を発現させることができます。従来のSiなどの半導体では格子定数のミスマッチなどからこのような積層構造を作製することは不可能でした。当研究室ではグラフェンやh-BNなど原子一層分の厚みしかない物質を切ったり張ったり、重ねたり自在に積層することによって人工的にこのファンデルワールス接合を作製する方法を用いて、未知なる性質を持ったデバイスを作製することを目標としています。

van der Waalsヘテロ構造。(A.K.Geim and I.V.Grigorieva, Nature,2013,499,419-425)

グラフェン,TMDを用いた量子デバイス開発

単層グラフェンはディラックコーンと呼ばれる特殊なバンド構造を有し、バンドギャップを持たないために電界を用いてナノスケールの微細な構造を実現量子デバイスの作製に適していません。しかし、二層グラフェンは面外垂直方向に垂直電場を印加することでバンドギャップを誘起させることができます。当研究室では二層グラフェンをh-BNで挟み込むことで高移動度化を実現しながら、電界を用いた量子ポイントコンタクトや量子ドットと呼ばれる量子デバイスの作製に挑戦しております。また元々バンドギャップを有するTMD物質を使用した量子デバイスの研究も行っています。

(a)h-BN/二層グラフェン/h-BNヘテロ構造に作製した量子ポイントコンタクト。(b)量子ポイントコンタクトのSEM像。(c)開放系量子ドットのSEM像。スケールバーの長さは200nm。

遷移金属ダイカルコゲナイドを用いた高機能デバイス開発

レーザー照射による物性制御

遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)は原子一層分の厚さしか持たない二次元物質ながらもバンドギャップを持つ物質であるため、次世代のエレクトロニクス応用に期待がされている。しかし、電界効果トランジスタ(FET)として応用するには未だ有効なp,n型ドーピングの方法が確立されていない。本研究室では半導体的な性質を示すTMDの一種であるMoTe2に対して様々な環境下においてレーザー照射を行うことでp,n型キャリアの高精度ドーピングに成功した。

TMDモノリシックデバイス

単一MoTe2結晶によって作製した
モノリシックインバータ。

MoTe2へのドーピング技術の応用として単一MoTe2結晶内においてp型として動作するFETの領域とn型として動作する領域を作り分けることで単一結晶においてインバータ動作させることに成功した。現在はp,n型キャリアの高精度ドーピング技術を用いた超高性能トンネルFETデバイスの実現に挑戦している。

走査ゲート顕微法

 走査トンネル顕微法(STM)や原子間力顕微法(AFM)に代表される走査プローブ顕微法(SPM)はナノ物質の構造や物性を調べるのに大きな威力を発揮する。

走査ゲート顕微法を用いた量子デバイスイメージング

国内外研究機関との共同研究ネットワーク