5.まとめ
近紫外逆光電子分光法(NUV-IPES)により、これまで困難であった有機半導体の空準位(LUMO準位)を固体中で電子を注入しながらの精密測定が可能になった。この測定法の特徴を挙げると次のようになる。
1. 照射電子線のエネルギーを有機分子の損傷閾値以下にすることで、有機試料の損傷を無視できる程度まで低下させた。
2. 測定する光の波長が近紫外域になった。そのため、光検出に積層多層膜バンドパスフィルターを用いることが可能になり、従来法の2倍の0.3 eVの分解能を得た。
3. 検出光エネルギーを容易に変えられるため、系統誤差を抑えることができる。これらにより有機半導体研究で要求される高い精度での電子親和力の決定が初めて可能になった。
4. 近紫外光を検出するため、従来の真空紫外光に比べ、光検出がはるかに容易になった。例えば、石英などの安価で高性能の光学部品を使うことが可能である。また、酸素による光吸収がないため、大気中での光検出が可能であり、装置の設計・調整が容易である。