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4.分光器+CCDによるスペクトル測定(セットアップc)

ホトマルでスペクトル観測ができたので、CCD検出器に置き換えて測定を試みた。上と同じく、銅フタロシアニンについての測定である。ここでは、照射する電子の運動エネルギーを一定にして、分光器をポリクロメータ―として使い光を分光した(TPEモードによる測定)。分光器の測定領域が限られているので、スペクトルの立ち上がり部分しか測定できなかったが、図3と同様のスペクトルが観測されている。また、電子のエネルギーを変えてもスペクトル形状が変化しないことから、確かに銅フタロシアニンの空準位が測定できたといえる。

4.分光器+CCDによるスペクトル測定(セットアップc)

図4:銅フタロシアニンのLEIPSスペクトル。異なる照射電子エネルギーについて、測定した(TPEモード)。

これまでに報告されている分光器によるIPES[2]と比較したところ、30倍ぐらい信号強度が高いことがわかった。これは、回折格子の反射率が高いこと、レンズにより高い立体角で光を捕集できていることが大きな要因である。従来の凹面回折格子では、像がボケるので立体角をあまり大きくとることができない。CCD検出器は、量子効率が高く、冷却すればバックグラウンドノイズが低い。一方で、近赤外まで感度があること、「宇宙線ノイズ」の影響があるなどの欠点もある。LEIPSの場合、迷光の主な要因は電子銃のカソードからでる黒体放射による迷光なので、近赤外に感度があるCCDでは、ホトマル(バイアルカリでは700 nmより長波長には感度がほとんどない)に比べて、迷光の影響がより大きな課題となる。

バンドパスフィルターを使ったLEIPSとの信号強度の比較は、単純にはできない。しかし、2時間程度の積算でこれぐらいSN比の良いスペクトルが観測されていることから、信号強度はかなり強いと考えてよいだろう(バンドパスフィルターを使った図2aのセットアップでも30分以上かかる)。