5.まとめ

市販の小型分光器を使って、近紫外域の分光をすることで低エネルギー逆光電子分光法の測定を試みた。検出器にホトマルを使ってのisochromatモード、CCD検出器を使ってのTPEモードのどちらでも、銅フタロシアニンのスペクトルが観測された。光検出の分解能は、0.07 eV程度であるから、バンドパスフィルターを使った場合に比べて倍以上分解能は高い。また、信号も実用になる程度の強度がある。分光器のF#値を小さくする、レンズをサンプルに近づけて光検出効率を高くするなどの工夫をすることで、実用レベルまで改善できそうである。バンドパスフィルターよりも高い分解能、バンドパスフィルターを透過しない波長領域(250 nm以下の短波長など)の測定で威力を発揮しそうである。

これまで、低エネルギー逆光電子分光法(LEIPS)の特徴として、高い分解能が得られる、有機分子の損傷がほとんどない、という特徴を挙げてきた[4]。もう一つ、近紫外光を検出するため、光の扱いが容易であるという特徴を活かして、市販の高感度・低価格の小型分光器をつかったのが本研究である。この他にも、近紫外光の特徴を活かした検出法がありそうである。